山火事の最中、消火用航空機から流れ落ちる赤いスラリーは、目に見える非常事態そのもののように見える。木々や屋根、道路、丘の斜面を赤く染める。その見た目は、人が不安を感じるときに「化学的」と呼ぶ、まさにあの感じだ。実際、それは化学物質でもある。だが奇妙なのはここからだ。火の勢いを弱めるためにまかれるその同じ物質の一部が、文字どおり植物の栄養にもなっている。[1]

それは矛盾しているように聞こえるかもしれない。だが、この赤い物質が何をするために作られているのかを知ると話は変わる。Phos-Chekのような長期残留型の難燃剤は、水のように炎を直接消し止めることを主な目的にはしていない。通常は山火事の前方、まだ燃えていない植生や建物の上に散布される。狙いは、火が到達する前に燃料を覆い、燃焼そのものの化学反応を変えてしまうことにある。[1]

だから人々の記憶に残る、低空飛行の航空機から赤い雲が降ってくるあの光景は、あくまで劇的な一面にすぎない。ほんとうの話はもっと静かだ。熱が草や低木、木材に届いたとき、そこで何が起きるかを変える話なのである。そしてそのために消防隊は、農業の世界で奇妙な第二の人生を持つ化合物に頼っている。

消火の鍵は水だけではなく化学にある

Phos-Chekは、アメリカで最もよく知られた山火事用難燃剤ブランドの一つで、1960年代から使われてきた。乾燥粉末か濃縮液として製造され、使用前に水で希釈される。[1] 地上から使うことも、空中から散布することもでき、C-130に搭載されたModular Airborne FireFighting Systemsのような装備でも運用されている。[1]

その長期残留型難燃剤は、一般にリン酸アンモニウム塩または硫酸アンモニウム塩をベースにしている。[1] この名前は重要だ。植生が熱せられると、これらの化合物は反応の流れを可燃性ガスの発生からそらし、炭化と水蒸気の生成へ向かわせる。要するに、植物を燃えにくくし、燃える速度も遅くするのだ。それによって消防隊は時間を稼げる。そして急速に広がる山火事では、その時間こそがすべてであることが多い。[1]

散布に含まれる水は、難燃剤を目的の場所に行き渡らせる役目を果たす。本当の持続力は、水が蒸発したあとに残る成分から生まれる。だからこそ「長期残留型」と呼ばれる。斜面が乾いた瞬間に、その保護が消えるわけではない。[1]

そもそも、なぜあれはあんなに真っ赤なのか

赤い色は火のためではない。人間のためだ。隊員たちは、散布がどこに落ちたのか、ラインが途切れていないか、どこに追加投下が必要かを見なければならない。Phos-Chekの製剤には視認性を高めるための着色料が使われており、山肌が巨大な絵筆で塗られたかのように見える、あの劇的な深紅の筋を生み出している。[1]

その見やすさは運用上きわめて有用だが、同時にこの物質の正体も覆い隠している。色を取り去って有効成分を見れば、意外なほど見覚えのあるものに行き当たる。リン酸アンモニウムは、単なる消火用の化学物質ではない。肥料としても使われているのである。[1]

難燃剤に隠れた奇妙な肥料

ここが話を逆説的に感じさせる部分だ。生態系の危機のまっただ中に投下される物質の中に、植物がまさに利用することを知っている栄養素が含まれている。リン酸塩とアンモニウム化合物は、植物の成長を支える主要な要素であるリンと窒素を供給する。だからこの難燃剤は、緊急事態が過ぎ去ったあと、ある意味では肥料としても機能しうるのだ。[1]

実際、それは難燃剤使用による環境上の副作用の一つとして指摘されてきた。こうした化学物質は景観を肥沃にしうるため、散布された地域の再生を後押しすることがある。それは無害に聞こえるかもしれない。だが、生態系は芝生ではない。成長の後押しは、必ずしも中立ではない。植物同士の競争関係を変え、ときには外来種までも一緒に利してしまうことがある。[1]

つまり、丘の斜面に引かれた赤い線は、同時に二つのことをしている。まずは斜面が燃えるのを止めようとする。その後、雨と時間が仕事を終えたころには、次にそこに育つものを養っているかもしれない。

火のあとに景観を変えうる防火ライン

この二重の性格こそ、難燃剤が有用であると同時に論争の的でもある理由を説明してくれる。一方では、それは山火事抑制のための率直な道具だ。燃焼を遅らせることで建物を守り、消防隊に勝機を与えられるため、家屋や植生、防火ラインに散布される。[1] だがもう一方では、それは何の影響も残さず消えていくわけではない。その成分は環境に入り込み、間違った場所に、あるいは多すぎる量で持ち込まれた栄養分が、炎のあとに戻ってくるものを変えてしまうことがある。

そこに静かな皮肉がある。私たちは消火を、景観をその場に凍結させるような、純粋に防御的な行為として思い描きがちだ。だが難燃剤は、ただ守るだけではない。介入するのだ。現在の燃焼の化学を変え、その後の成長の化学までも変えうる。[1]

つまり、あの有名な赤い投下は、単なる防壁ではない。文字どおり、空からの栄養散布でもあるのだ。

本当の驚き

この事実が頭に残るのは、山火事用難燃剤が化学物質を含んでいるからではない。そんなことは当然だ。本当に記憶に残るのは、同じ物質が、一見すると正反対に見える二つの考えの交点にあることだ。破壊を止めることと、成長を促すこと。それは火を遮るために設計されているのに、その余波の一部は、落ちた地面を肥やすことになりうる。[1]

だからといって、それが魔法になるわけでも、無害になるわけでもない。ただ、より興味深くなるだけだ。飛行機からまかれる赤い物質は、劇的な色の液体であるだけではない。パイロットに見えるだけの視認性を持ち、消防隊に役立つだけの持続性を持ち、そして危機が過ぎたあとには景観がそれを栄養として記憶しうるほどに栄養分を含んだ、意図的に設計された折衷案なのである。

出典

1. Wikipedia - Phos-Chek