その犬の存在意義を証明するはずだった試験で、救助されるはずの泳者は標的になってしまった。モスクワ・ウォーター・ドッグは冷たい水に入り、荒れた環境の中で重い被毛をまとったまま泳ぎ、軍が求める体格で動くことができた。だが救助すべき水兵のもとへ到達すると、助ける代わりに襲いかかり、噛みつく傾向があった。[3]

モスクワ・ウォーター・ドッグは、モスクワ・ダイバー、またはモスコフスキー・ヴォドラズとも呼ばれた、ソ連時代に冷水での救助作業のために作られた犬種だった。しかし、溺れている人に対して攻撃的すぎたため計画は失敗し、この犬種は1980年代までに姿を消した。

第二次世界大戦後、ソビエト連邦は作業犬をめぐる問題を抱えていた。戦争中に多くの犬が命を落とし、国家が望む専門的な軍用犬計画を支えるには、輸入された犬だけでは足りなかった。[2] レッドスター・ケンネルとしてよく知られる中央軍用犬学校では、軍務のための新しい犬種の開発が始まった。[2]

その実験のひとつが、水難救助を目的としたものだった。配合の出発点となったのは、力強い水難救助犬として知られるニューファンドランドで、そこにより頑健な番犬や牧羊犬の血統が加えられた。モスクワ・ウォーター・ドッグについての記録では、ニューファンドランド、コーカシアン・シェパード・ドッグ、イースト・ヨーロピアン・シェパードに由来すると説明されている。[1] RussianDog.netによれば、この取り組みは戦後ドイツからレッドスター・ケンネルへ連れてこられたニューファンドランドをもとに、コーカサス系の犬と交配し、のちにロシアン・ジャーマン・シェパードも掛け合わせたものだった。[3]

完成した犬は、任務に合った体を備えているように見えた。PetGuideは、モスクワ・ウォーター・ドッグを体高26〜30インチ、体重100ポンド超の犬とし、荒天や冷たい水に適した厚いダブルコートを持っていたと説明している。[1] RussianDog.netも、凍るような水や寒冷な気候に耐えられる優れた泳ぎ手だったとしている。[3] またこの犬は、モスクワ・ウォーター・ドッグ、モスクワ・ダイバー、モスクワ・レトリーバー、モスコフスキー・ヴォドラズ、ロシアン・ニューファンドランドなど、いくつもの名前で呼ばれていた。[2][3]

救助を台無しにした性質

水中での能力を考えれば、繁殖計画にニューファンドランドを取り入れたのは理にかなっていた。一方で、コーカシアン・シェパードの血は、より厄介な性質ももたらした。RussianDog.netは、モスクワ・ウォーター・ドッグの気質はニューファンドランドよりはるかに攻撃的だったとし、その特徴を、財産や家畜を守る番犬種でありながら制御が難しいコーカシアン・オフチャルカに結びつけている。[3]

その気質は、この犬種が最も失敗を許されない瞬間に問題となった。PetGuideはその欠陥を端的にまとめている。つまり、この犬は溺れている人を救助するよりも、噛みつくほうに傾きがちだったのだ。[1] RussianDog.netは軍での失敗を、犬たちは水兵を救う代わりに襲って噛みつく傾向があった、と説明している。[3] Wikipediaの項目にも、溺れている人を救うのではなく攻撃してしまうため、繁殖計画は中止されたと記されている。[2]

番犬にとって、警戒心は役に立つことがある。だが水難救助犬にとっては、それが任務そのものを不可能にしてしまう。犬は苦しんでいる人へ向かって泳ぎ、相手との接触を許さなければならない。モスクワ・ウォーター・ドッグには体格も、被毛も、冷水への耐久力もあった。しかし、その仕事に必要な、信頼できる抑制力が欠けていた。

残されたもの

ロシア海軍はこの繁殖計画を打ち切り、PetGuideはこの犬種が1980年代までに絶滅したと説明している。[1] RussianDog.netは、より緩やかな終焉を描いている。1960年代後半までに、モスコフスキー・ヴォドラズの将来は民間の手に渡り、犬たちは主に純血のニューファンドランドと戻し交配された。1980年代半ばには、ロシアン・ウォーター・ドッグはもはやニューファンドランドと区別できなくなり、絶滅したと見なされるようになった。[3]

この犬種が、一般的に認められた主流の犬種になることはなかった。Wikipediaでは絶滅犬種とされ、主要なケネルクラブには認められていないと記されている。[2] PetGuideも、十分な頭数が繁殖されたことはなく、完全に確立された犬種でもなかったとしている。[1] その最も明確な遺産は間接的なものだった。WikipediaとRussianDog.netはいずれも、モスクワ・ウォーター・ドッグがブラック・ロシアン・テリアの作出に関わったと述べている。[2][3]

こうしてモスクワ・ウォーター・ドッグは、ほとんどの場合、失敗に終わった軍用犬構想として記憶されている。凍てつく水のために作られた巨大な黒い救助犬が、水兵のもとへたどり着き、差し伸べるべき助けの代わりに牙を選んだ――そんな鮮烈なイメージとともに。

出典

  1. PetGuide, "Moscow Water Dog"
  2. Wikipedia, "Moscow Water Dog"
  3. RussianDog.net, "Russian Newfoundland, the Extinct Dog"